< 1月12日ランダル・ロックウッド博士講演会より「コレクター」について抜粋編集いたしました >

 

コレクターは収集癖者(hoarder)という病理性のもの
1月12日ランダル・ロックウッド博士講演会

過剰多頭飼育者の研究は米国でもこの5〜10年来始まったものであるが、

近年非常に増加しており、しかも動物の健康からも公衆衛生上でも解決が難しいもので、

大きな社会問題化している。HSUSのなかの愛護関係の機関とタフツ大学と共同で研究を始め

多くのデータを得たのでここに発表したい。
コレクターは何でも囲い込む、溜め込むという意味でaddicts(中毒者、依存症)というべきで

むしろhoarder(蓄積者)と言う方が正しい。多数の動物を個人又は少数で飼育している人の中には

最大2000頭の犬を飼っていたケースがあった。衛生状態は最悪で、餌が行き渡らず、共食いを始める

ケースもある。大型犬数十頭をを2年間も室内に閉じ込め一歩も出さないこともある。

これらの動物の飼い主は指摘に対し、殆どその状態が見えないような振る舞いをして、改善の要請に

全く対応出来ない。きれいにたくさんの動物を飼っている人もあるが、ある日突然金が全く無くなり、

又は死亡すると多くの動物が残され社会問題化する。報道ではこれらの人々は多くの動物を救う

“善意の人”と称えられ、家の中でどのような不衛生なことが行なわれているか見てはいない。

問題は次第に増えてきていることで私の手元に毎日2〜3件の報告が来る。

外見からは動物好きの人たちでそこに「病理」を見ていない。動物は自家繁殖を始めその数は

次第に増加する。犬よりも猫のほうがその傾向が強い。増えることは飼い主がケアをする時間が

少なくなることで、運動時間、所持の時間、グルーミングの時間がどんどん減っていき、

獣医療にかける時間も無くなって来る。ハワイで250頭の犬を飼っていた人は5匹しか獣医に連れて

行かなかった。これは獣医が密告するとの邪推から各所の獣医に少しづつ分散して診療に連れて行き、

全体の頭数が分からないようにする。多くの場合、食餌の質が低下して終いには行き渡らなくなる。

排泄物が堆積し病気が増え、衛生上の問題が発生する。ニューメキシコ州で犬が80頭飼われ、

愛護団体が介入して世話をしたことがあったが、こう傷事故が発生して手を引くことになった。

動物のサンクチュアリと称し募金もし、終生飼育を宣伝して多くの犬を集めたケースでは

窓の無い部屋に1000頭を飼い、皮膚病、骨格異常が蔓延し、結果として800頭を処分し

200頭が里親に引き取られた。


 【過剰多頭飼育のタイプ】 

2/3〜3/4は女性である。そのうち2/3は結婚していない。30代から始める人が多い。

複数のカレッジ卒業など高学歴が多い。

職歴 − 教師、看護士、ソシアルワーカー、獣医師、テクニシャンなど
家族よりも動物のケアが優先する。(全ての時間、全ての収入を投じる)。

それらを支えるサポーターや家族もいる。
シェルターと称して動物を受け入れ、1頭も里親に出さないのでおかしいとスタッフ、ボランティアが

告発するケースもある。行政からの払い下げ動物をシェルターと称し囲い込むケースもある。
コロラド州の議員の奥さんは2000頭の犬を払い下げてもらったが、数百頭の犬の死骸が発見された。
このような場合、これらのことを意識外におき(ネグレクト)全く清掃をせず、衛生状態に関心を持たない。
マンション内で犬60頭を飼育した夫妻はベランダに衣装をつるし、出勤時に着替え、帰宅してまた

汚い衣装に着替える生活をしていた。車の中に衣装を隠し、車で着替えて往復する人もある。

 【手元から放したくない病理】 
手放せば抹殺するのと同じという心理が働く。タフツ大学が始めて発表した49件の例では
77.6% 家の中が汚れきって不衛生状態
69.4% 人間の生活区域の中に排泄物が放置されている。
59.3% 家の中に動物の死骸があった。
30頭トラを飼っていた ある家では子トラが冷凍庫に貯蔵されていた。このように犬、猫、ウマ、

鳥、ネズミ、ビーバー、イグアナ、あらゆる動物がコレクションされている。
共通点 − 生活機能が破壊されている。洗面所、キチン、台所、冷蔵庫、暖房が無いなど

単に動物が好きだというだけでなく、人間の福祉サービスが対応せねばならぬ「病理」が存在するケースだ。


 【衛生上の問題】 
動物の福祉のみでなく人畜共通感染症も含め、人間の公衆衛生上の大きな問題になる。
小さな場所に多量の糞尿が堆積した場合様々な感染症の温床になる。
猫の死骸から来る病気・・パスツレラが大問題だ。切り傷などから感染し死にいたることもある。

爬虫類、カメなどは、池やたらいがサルモネラ菌の温床として大発生する。これも死にいたる危険がある。

ノミ・ダニ媒介の病気には、ライム病がある。

鳥仲介の人畜共通感染症には、ヒストプラズモーシス、シッタコーシスがある。

猫のトキソプラズマ、うさぎのツラレミアは多頭飼育の場合が多い。猫を多頭飼育すると

白血病や猫エイズが蔓延する。このような猫群で育った子猫は多くの場合安楽死せざるを得ない。

 【空気の質】 
多頭飼育者の家の中の空気中のアンモニア濃度は標準よりきわめて高く、標準が50ppmに対し

300ppmもあり、中には一旦窓を開放しても152ppmもある場合もあった。

このような事実をコレクターに対しはっきり説明し、工場なら逮捕されるような環境なので、

動物の集団と人間が生活できる環境でないことを認識させるべきだ。
人間の福祉、多くの不都合が生じる。ゴミがたまって歩行が困難な状況、高齢者が転んだり、

下敷きになる危険、火災の危険などソシアルワーカーや保健婦が定期的に調査に入れない状況にある。


 【コレクターの社会観】 
錯乱した状況ではない。認識力はあるが、外部に対し疑心暗鬼で入られたくない心理が働く。
行政や愛護団体は動物を取り上げ安楽死させる敵とみなす。(事実安楽死せざるを得ない悪化した

状況になっていることが多い)自分たちはレスキュー活動している。だから一切里親にも出さない。

特別な理由を考え出して一切出さない。今「生きている」ことが全てに勝ると考える。


 【精神疾患からの観点】 
OCD/強迫神経症の一種と考えられる。自分の周りから自分の世界の秩序を守ること、

色々な儀式を繰り返し、安全且つ予測可能なものにする。(何十回も手を洗う。ドアのかぎを

何回も確かめる。)収集癖も付随している。

 

 【動物収集癖の人の特徴】 
私以外にこの子を引き取れない、この子達無しでは自分は生きられない。

「引き離されたら自殺する。」とも言うが未だその例は無い。


 【動物収集癖者への対応(47件)】 
26%本人を保護者の下に置いた。(生活管理を他人の監督下に)
11% 住居を完全に破壊した。(汚染がひどく撤去した)
18% 継続的に裁判所の監視下に置く。〈生涯続く〉
24% 精神鑑定〈現在はもっと高い〉
5% 実刑を受けた。


 【動物虐待防止法違反で告発されたケース〈グラフ56例〉】 
中高年の女性が多い。犬、猫の多頭飼育が圧倒的に多い。

一人で実行する例が半数以上、夫婦は32%
軽犯罪で罰せられることが殆どだ。〈罰金1000ドル以下〉

 【Task Force「解決への作戦チーム」】 
<多頭飼育解決への役所の作業部会の設立>
役所間で対話のチームが必ず必要である。
1、民衆の安全のため ・・・ 警察、消防
2、公衆衛生のため ・・・ 公衆衛生局
3、社会福祉のため ・・・ 社会福祉局
4、住宅の専門家 ・・・ 住宅局
5、精神衛生 ・・・ 精神衛生の専門家
6、動物福祉 ・・・ 民間団体+動物管理局
7、司法の専門家 ・・・ 裁判所、警察
8、一般市民、ボランティア、家族、友人
これらの合同部会を立ち上げて、自然災害のときと同じように人と動物の健康と安全をどう確保するか。

各集団にどのような専門家が必要か、どの範囲で動くかの線引きが必要だ。


<リスク評価をする>

(動物の状態への対処、死亡か、入院か)人への対処〈すぐ入院すべきか、精神衛生専門家があたるべきか〉、

何法で対処するのか、〈自分で所有権放棄するか、法的な没収が可能か、飼育不適格者の判断が下せるか、

その場合の人と動物への出来るサービスはなにか、人の職は確保できるかなどを、討議する。


<ケースプランを作る>

〈各事例に何処が対処するのか決める〉誰が何時、何をやるのか、精神衛生の専門家が加害者に何時接触するのか、

ソシアルサービスを対応する役所は何処が何時やるか、などを討議して決める。


以上はウィスコンシン州に委託されて作ったマニュアルの一部であり、

現在これが更にアメリカ中に広がるように活動している。


以上は、ロックウッド先生の講演の抜粋ですが、1月11日の「クロストレーニング」のお話とともに

記録集を現在編集中です。 ご入用のは方、事務局へお問い合わせください。

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